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東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)129号 判決

〔判決理由〕

一 特許庁における本件審判手続の経緯、本件登録商標の構成、指定商品、登録出願および設定登録の日、その帰属の経緯、本件審決の理由の要旨についての請求原因第一、二項の事実および原告がその主張の引用標章をその主張の商品化粧用クリームに使用していること(その使用開始の時期の点を除く。)は、すべて当事者間に争いがない。本件登録商標と引用標章とを比較対照すれば、本件登録商標が引用標章と類似することは明らかであり、また、右争いのない事実によれば、両者が使用される商品もたがいに同一または類似のものというべきである。

二 本件においては、本件登録商標が引用標章との関係において旧商標法第二条第一項第八号または第一一号(そのうち、商品の混同を生ぜしめるおそれあるもの)の規定に該当するか否かが争点であるが、まず、同項第一一号該当の事由の存否について判断する。

旧商標法が、その第二条第一項第一一号において、商品の出所の混同のおそれある商標につき、その登録を許さないものとしていたのは、このような商標の登録を許すときは、商品の出所の混同を生じさせる結果一般取引の安全を害し公益に反するにいたるものとしたからと解される(同法第一一条、第二二条第二項、第二三条但書参照)。この規定の趣旨を右のとおり解すべき以上、たとい、その商標の登録出願当時においては商品の出所の混同を生じさせるおそれのない商標でも、その後の事情の変化により、登録審査の時までに、商品の出所の混同のおそれあるにいたつた場合においては、これについて登録を許すべきものとすれば、前示の公益に反する結果を生ずることは明らかであるから、その登録を許さないこととしなければ、右規定の精神を貫徹しえないこととなるのはいうまでもない。したがって、旧商標法下の解釈としては、右規定に該当するか否かの判断は、これについての登録許否の特許庁における最終審査の時を基準時とすべきものとするのが相当である(大審院昭和四年一〇月二六日判決参照)。

ところで、<証拠>と弁論の全趣旨とによれば、原告会社は、昭和三一年四月下旬から同年五月二三日頃までの間に商品サンリョウパック(大)約七五〇個、同(小)約一九〇個、同見本三〇個を販売頒布し、また、同年五月上旬から同月中旬にかけ右商品についてのパンフレット二、六〇〇枚、同年四月中旬に「SANRYO Pack」と表示した標章紙一〇、〇〇〇枚、同年四月二一日に右商品用紙箱三、〇〇〇個、同年四月中旬から同月下旬にかけ同商品用乳白瓶五、五三六個およびキャップ六、一〇〇個、同年四月三〇日および同年五月一〇日に「SANRYO Pack」と表示した洋封筒合計一〇、〇〇〇枚等の購入納付を受けたこと、原告会社は、右のような営業活動を拡大しつつ、さらにその頃から昭和三一年九月頃にかけ、全国的な販路を拓くべく、新聞、雑誌、その他の方法によって、引用標章にかかる右商品の宣伝広告におおいに努め、一方、訴外三陵物産株式会社とは、同年四月三日付で、原告会社の製造した右商品サンリョウパックについて毎月最低五〇〇個販売委託の特約代理店契約を締結していること、原告会社は、その設立準備中の昭和三〇年一二月頃、商品化粧用クリーム(サンリョウパック)の製造販売の事業化に踏み切り、以来商品の試作、試験、引用標章や包装の図案、意匠の作成等所要の準備を進めて来たものであるが、前示のように引用標章を付した右商品の市販を始めて以来、その月月の売上げが順次伸び、ことに、昭和三一年九月頃、原告会社が化粧品業界における有力な問屋である大阪市所在の訴外株式会社大粧と右商品の販売について総代理店契約を締結するにいたつてからは、原告会社の引用標章を付した右商品は、市場に広く出廻り取引者需要者の間に知られ、主として、東京および大阪の市場を中心にし、国内約五、〇〇〇軒に及ぶ販売店において取り扱われるにいたつていたことが認められ、右認定の事実を左右する証拠はない。

以上認定の事実によれば、引用標章は、本件登録商標(昭和三三年三月一一日設定登録)について登録許否につき特許庁における最終審査のされた当時においては、すでに、原告の業務にかかる右商品について、その出所を表示する標章として、取引者または需要者の間にきわめて広く認識されていたものと認めることができる。そして、本件登録商標は、このような引用標章と類似し、使用される商品もたがいに同一または類似のものであることが、前示のとおりである以上、引用標章にかかる右商品の出所の混同を生ぜしめるおそれあるものと認められ、本件に適用のある旧商標法第二条第一項第一一号の規定に違反して登録されたものに該当するというべきである。したがって、その登録は、これを無効とすべきものである。

三 右のとおりである以上、本件審決は、その余の点について判断をするまでもなく、違法のものであることが明らかであり、その取消を求める原告の本訴請求は、理由がある。

(小沢文雄 三宅正雄 荒木秀一)

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